恋愛の条件
(私ってサイテー!どこまで自分勝手で浅はかなのっ……)


奈央は服を着ることもなく、その場に疼くまった。

冷たくなったシーツにまだ片桐の体温を探そうとする。

髪に残る彼の匂いにまた目の奥が熱くなった。

片桐の優しさを利用した。

他の男を忘れたくて、何もかも包みこんでくれる温もりが欲しくて利用した。

刻まれたこの想いは消すことができないのに、心の底はこんなにも修一を求めているのに。


(あぁ、もう……自分が情けなくて、腹が立ちすぎて、今度は涙も出てこない)


胸が鷲掴みされたみたに痛いのにどうして自分は平気で呼吸をしていられるのだろうか。

自分を誤魔化し、人を傷つけ、それでも普通に心臓は動いている。

自分はどこまで浅ましくなれるのだろうか、と奈央は自分自身に心底嫌気がさした。


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