恋愛の条件
ばぁぁん……

山内課長がミーティングルームを出て、数分。すごい勢いで奈央が出てきた。

「あ、あの……広瀬さん?」

五十嵐の驚いた顔が目に入るが、今の奈央にはそんなこと構ってられない。

「五十嵐君、黒沢チーフはっ!?」

「い、今……オフィスを出ていかれましたが……?」

「そう、ありがとう!」

奈央は足早にオフィスを出ると、エレベーター前に修一を発見した。

「修!どういうことよっ!?」

「奈央♪」

カツカツとヒール音を立てすごい剣幕で迫ってくる奈央とは対称的に、修一はとびきりの笑顔を奈央に向けた。


(うっ……。そんな人の顔見て嬉しそうに笑わないでよ……
……ってそうじゃなくて!! )


「全っ然話が読めないんですけどっ!」

「あっ、もう山内課長から聞いた?」

「聞いた?じゃないわよっ!どういうこと?」

「聞いたまんま♪奈央は俺の補佐でというより、ニューヨーク支社のジェネラル
マネージャーの秘書として転勤♪」

奈央には何がなんだかわからない。

どこでどうなって、自分がジェネラルマネージャーの秘書に?

「ちょうどさぁ、秘書が結婚退職するんだよ。あのおっさんの秘書やらせるのはイヤだけど、俺が推薦しておいた。あぁ、秘書といってもこことやることかわらないよ。秘書業務だけでなく、クライアント対応もしないといけないし、今以上に大変になるだろうな?」

「そ、そういうことを言っているんじゃなくて!!」

「あっ、俺と一緒にすぐに行けなくて寂しい?大丈夫、数週間ぐらいならすぐだし?」

奈央はこめかみに手をおいて大きくため息をつく。

「ねぇ、私が言いたいのは……」

「奈央、本当は仕事やめたくないんだろ?」

「えっ……」

奈央の言葉を遮るように修一が真面目な顔で聞いてきた。


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