恋愛の条件
給湯室に行くと、待ち構えたように沙希がコーヒを淹れて雑誌を読んでいた。

「はい。少し休んだら?」

珍しい、あやちゃんじゃないのね、とそんな言葉は心にしまいながら奈央は素直にコーヒーを受け取った。

「またここにサボリに来たの?」

「沖田もかわいそ~。最後のチャンスに奈央ちゃんを誘おうとしてたのに」

奈央の質問は全くスルーし、笑いながらコーヒーをすする。

「断るのもかわいそうでしょ?」

「以外に奈央ちゃん、冷たい?」

罵詈雑言に沖田のことを貶していたのは誰だろうか、と沙希を一瞥する。

「奈央って気の無い男には誘うことすらさせないよね?」

「沙希だってそうじゃないの?」

「いや、私は誘わせて、思いっきり断る。その方が相手は諦めがつくからね」

断言する彼女に、何も言えない。

そっちの方が冷酷じゃないのか?

< 31 / 385 >

この作品をシェア

pagetop