恋愛の条件

「お前の気持ちなんかわっかんねぇよ、生憎俺はドМの根性無しじゃねぇからな?」

「お前、沙希みたいなこと言うなよ……」

最早、山下は脱力するしかない。

「ぷっ、沙希にも言われたのか?」

「あぁ、お前に殴られ、沙希にまで殴られた」

「あいつ、女のくせにグーで殴るからなぁ。しかもミゾオチ……」

「二人して奈央を傷つけるなって……俺が一番傷ついたっつうの!!」

「お前が当てつけみたいに佐野さんと付き合うからだろっ?少しは奈央の気持ち考えろよ?」

「おいっ!」

山下はあまりにも自分勝手なこの男の発言に呆気に取られ、言葉を失う。

そして、こいつのことを今から「ジャイアン」と呼ぼうと心で誓ったのだった。

別に当てつけで付き合ったわけではない、そう言おうとしたが、ジャイアンに言うだけ無駄だと、言葉を飲み込んだ。

「お前が奈央の気持ちを語るか?お前が一番奈央を傷つけてきたんだろうがっ?」

「俺はいいの!でも俺以外の男が奈央を泣かすようなことをするのは許さねぇ」

「勝手なヤツだなぁ。俺は知らなかったんだよっ!奈央と千夏が同じ部署になるなんて。心配でそれで……」

「にしても、お前はデリカシーがなさすぎ」

「……。黒沢、お前がデリカシーという言葉を使うな!かんべんしてくれ」

「で、佐野さんとうまくいってんの?」

「まぁ、それなりに」

「何だよ?お前まだ奈央に未練があるとか言うなよ?」

「無いよっ!医務室であんなところ見せられて……あれですっきり断ち切れたよっ!」

「そうだ!あん時お前いいとこで邪魔すんなよなぁ」

修一は数日前の医務室の情事を思い出し、機嫌悪るそうにタバコを咥えた。

「おい、火!火かして!」

「(コイツはっ……俺を絶対に先輩だと思ってねぇ……)」


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