恋愛の条件
「お前と一緒にニューヨークへ行った時に気付いた。WILが食いついてくるには話がうますぎるからな?人員が手薄になるのをわかっていながら、あえてこっちを急がしくさせたのはどうしてだ?これからどうするつもりだ?」

「片桐さん気づいているんでしょ?」

「海外事業の拠点をニューヨークに移させる気か?」

「流石だなぁ……」

「おい、黒沢、どういうことだよ?」

事を理解していない山下が尋ねる。

「あんな空洞化した本社のスカスカ体制じゃこの会社は絶対に生き残れない。確実に時代の波から置いてかれる。一つのクライアントにどれだけの無駄な承認と時間を費やしているか今回のことでもわかりました。生産効率も最低なら長時間働いて得られる付加価値はアメリカの企業の60%もない。」

「言ってくれるな」

タバコをふくむ片桐の口元に苦笑いがこみ上げる。

片桐自信も気付いている問題だ。

「事実でしょう?能力結果主義を疎かにしてきたツケが今たまってきているんですよ?山内課長みたいなな人は珍しい。でもあの人がいくら頑張っても上から潰されるだけです」

「大きな取引5つ同時進行で立ち往生させて、ギブアップしたところにニューヨーク支社の黒沢登場か?技術チームを現地で編成させて全て持っていく気か?」

「そこまで恰好のいいものじゃないですけどね?」

「フッ、大したもんだ。だが……」

片桐は冷静な口調で続けた。

「お前の計画は一つだけ盲点がある。」

「盲点?」

「取引は全て成功する。お前がいなくてもだ」

「………?」


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