恋愛の条件
「俺がいるからな?」

「あなた一人じゃ無理だ。しかも、あなたは技術チームのトップだ。いずれ現場に戻らないといけない」

「どうかな?俺がそんな無様な様を見せると思うのか?」

「まいったなぁ……」

修一は髪をくしゃと下ろして椅子の背もたれによりかかった。

「あなたなら全て一人でできそうですね、本当に……」

「当たり前だろ?」

「でも、それでもいいんです。あなたが本社を変えてくれればいい」

「そう買いかぶるな。俺にはお前のような情熱はない。ただ一度手にした獲物は最後まで追う。それだけだ」

「ホント敵わない。話に乗ってもくれないんですね?」

「勝算の低いギャンブルはしない」

「まっ、俺はニューヨークオフィスで頑張りますよ」

「俺はここでじっくりお手並み拝見といこうか?お前のことだ、直進しすぎてどこかでコケるだろ?その時は思いっきり笑ってやるさ」

冗談まじりに言う片桐とは反対に修一は真面目な顔つきで片桐と向き合った。

「取引き、頑張ってください。本心から思ってますから」

「誰にモノを言っているんだ?」

「クス、そうですよね?」

「お前は……」

「はい?」

「お前は一つのことに集中すると周りが見えてないことが多い。もう独りじゃないんだから立ち止まって振り返ってやることも大事だぞ?自信過剰は大いに結構だが、度をこすと足元をすくわれるぞ?」

「(それって……)」


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