恋愛の条件
「幸せにしてやれよ」

「えっ……」

「お前にはもったいないくらいのいい女だが、男の趣味が悪いときている」

「ひでぇ」

「幸せになる価値のある女だ」

「クス、俺もそう思います」

修一は真っ直ぐ片桐を見て続けた。

「大丈夫ですよ、必ず幸せにします。あいつ、俺のことすんげぇ好きみたいなんで♪」

「お前はホント、ブレないやつだよな。ここまでくると見事なもんだ」

「だから言ったでしょう?こいつは絶対に変わりませんよ……イテテテ……」

山下の細い首はまだ修一に絞められている。

顔が赤いのはアルコールのせいではないだろう。

「おい、いい加減はなしてやれよ?死ぬぞ?さて、俺は朝が早いから先に失礼するよ」

片桐は目を細めて残りのビールを一気に飲み干した。

「あっ、はい」

「あぁ、そうだ……」


片桐が行きがけに思い出したように振り返った。

「お前も広瀬さんもあと1ヶ月は本社の海外開発に在籍しているんだから、その間は死ぬほど働いてもらう。明日、8時ミーティングだからな。広瀬さんにも伝えておけよ?」

「はぁ???何でそんな急に……」

「次のプレゼンまで詰めておかないといけない箇所が何点かある。お前が持ち込んだ企画だ。日本にいるギリギリまで全力を注いでもらおうか?」

片桐はニヤリと笑いそのまま居酒屋を後にした。


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