恋愛の条件
「それで、妹に先越されるってどんな気分?」

「沙希のイジワル……」


相変わらず沙希は痛いところをついてくる。


「修一と喧嘩したまま出てきたんでしょ?」

「えっ?広瀬さん、黒沢チーフと喧嘩して帰国したんですか?」

佐野の大きな瞳がさらに大きく開く。

「うん……まぁ……」

「どうして、喧嘩なんか……あっ、すみません、出過ぎたことを」

「いいのよ。もう、修なんて知らないっ!」

奈央は、子供のように拗ねた様子でちびちびとジョッキのビールに口をつける。

彼女はアルコールに余り強くない。沙希はもちろんのことだが、佐野はかわいい外見に似合わずかなりの酒豪だ。

二人に合わせていては、二日酔いどころか急性アルコール中毒になってしまう。

「意地張らずに、“早く結婚して、妹に先越されたじゃないっ!”って言えばいいのに」

「なっ……」

「何で知っているかって?」

沙希は意地悪い顔で奈央を下から覗き込む。

「言わな~い♪」

「沙希!」

「そ、そんなことより、広瀬さん大丈夫ですか?黒沢さんはニューヨークなんですよね?」

「そうよ。それが何か?」

佐野の前ということもあってか、奈央はつい強気な態度に出る。

内心は泣きたいくらい滅入っているというのに……



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