恋愛の条件
修一と一緒にいたくて、離れたくなくてニューヨークについていくことに同意した奈央だったが、修一の配慮で、奈央はニューヨーク勤務を希望していたことになっていた。

それはそれで、仕事も続けられるし、会社に自分を評価してもらえたことも嬉しかった。

だが、それはそれ、だ。

転勤して早々本社に「結婚します」なんて報告できないのは分かっている。

だが、修一があの感動のプロポーズ以来一向に結婚のことを進めようしない。

その上、ニューヨークに着いた次の日から、思い描いていた「恋人との甘いマンハッタンライフ」は激務に忙殺され、心身とも疲れ切っているところに、妹の結婚式への招待状が届いたのだ。

ちょっとした他愛もない一言だった。

「ついでに私たちも籍入れる?」

軽い気持ちで言ったけど、内心ドキドキしていた。

情けない。

最初は、絶対にジューンブライドがいい、とか

ガーデンウェディングがいい、とか言っていたくせに。

結婚してくれるなら籍だけでも、と思っている今の自分がすごく浅ましく感じた。



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