恋愛の条件
「すげぇな……そんなに腹へってんの?」

急に聞き覚えのある声が響き、奈央の背筋に一瞬の緊張が走る。


(い、今の声って……)


「空耳よね?ヤダ、私ったら……」

頭をブンブンと振り、最後のデータ移動に集中する。

「何ひとのこと無視してんだよ?」

低く耳朶に響くそのバリトンにどこか懐かしさを覚える。


(そ、空耳じゃな、い?この声もしかして……)


恐る恐る振り返る、いやその声に振り返させられたと言っていいだろう。

奈央の視界に飛び込んできたその姿に心臓が跳ね上がるような眩暈を覚えた。


(!!!!)





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