恋愛の条件

「沙希先輩、どういうことですかぁ？」

不機嫌そうな奈央をチラと横目で見ながら、好奇心いっぱいといった面持ちのあやがデスク越しにたずねてくる。

（あぁ、もうこの二人は……）

「今日、奈央姫のご機嫌斜めの理由はそれでしょ？」

「別に機嫌悪くないわよ。それより沙希、そんなこと聞きにわざわざ営業に来たの？」

話を変えようと沙希の手にしている書類に目を走らせる。

「あぁ、この契約書ね、一つ誤字があったから。訂正してから社長印申請をもう一回してくれる？」

「それ作成したの、あなたが座っている席の方だから。そのデスクに置いておいて」

「沖田か？このバカによく言っておいてよ。総務部長、こういうミスにすごく厳しいのよ。この私がわざわざ出向いてやったって言うのに」

沙希の意識が自分以外に向けられ、ホッと胸を撫でおろすも、彼女はそんなことより、と奈央と向き合う。

「な、何？」