雨の中にたたずんで
「やっぱりまだいた」


何度目かのため息を足元に吐き出したところで、ぐっと腕を掴まれる。


慌てて顔を上げると、やっぱりその声は優輝くんだった。




「あ・・・」



逃げようと思ったけど、今度はその腕を振り切ることができず

さらに強く握られてしまう。


「・・いたっ」


「こっち」


優輝くんはずるずるとひきずるように私を引っ張り正門まで連れて行く。


「乗って」


目の前に現れたのは、見たことのある車。

シルバーのスポーツカー。




優一さんが私とドライブに行こうと買ってくれたものだった。
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