雨の中にたたずんで
ドアを開け、ゆっくりと助手席に乗り込むと優輝くんは慣れた手つきで車を発進させた。
「どこに、行くの?」
思い切ってそう聞いてみたけど、優輝くんは黙ったまま前を見つめている。
気がつけば、見たことのある町並みに車は滑り込んでいった。
行き着く先がわかった私も、黙ってその風景を眺めていると
やがてゆっくりとエンジンが止まった。
ああ、やっぱり
たどり着いたのは、優一さんのアパートで
優輝くんは車を降りると当たり前のように階段を登っていった。
私はただ優輝くんの後ろからゆっくりと歩いていく。
優輝くんは鍵を開けると、無言で私に入るように部屋へと促した。