雨の中にたたずんで
「これ・・・」


紙を持つ手が震えてしまう。




それはまぎれもなく、優一さんの字で書かれた婚姻届だった。





ぽっかりと空いた大きな穴の中を

あたたかいものがあふれていく。



「証人欄、書いて欲しいって頼まれた」



優輝くんは私の手から婚姻届を取り上げると、いきなりライターで火をつける。


「何するの!?やめてっ!!」


そう言って取り返そうとしたものの、火はあっという間に優一さんの文字を消し

優輝くんは火のついた婚姻届を灰皿の上に投げた。



その瞬間、頬を熱いものが滴り落ちる。

それはパタパタと頬を滑り落ち、テーブルについた私の手の甲をぬらしていた。
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