雨の中にたたずんで
6.他の誰かの代わりじゃなくて
「親父の代わりでいい。俺を愛してくれない?」
その言葉は
「親父の代わりじゃ嫌だ。俺だけを愛して」
そう言ってるように聞こえた。
まっすぐに見つめられる瞳は、はかなげに揺れて今にも大粒の涙が零れ落ちそうだ。
私は思わずその頬に手を伸ばす。
初めて自ら触れた頬は、しっとりとしていてとても柔らかい。
優一さんとは違う。
そこで初めて、優一さんそっくりの優輝くんが違う一人の人間なんだということに気づいた。