雨の中にたたずんで
「親父・・・」




優輝くんはそうつぶやきながら、傘を持つ反対の手で私の肩をぎゅっと抱き寄せた。



優輝くんは何か話したそうにしていたけど、ぎゅっと唇を噛み締めている。


私はそっと優輝くんの腰に腕をまわすと、寄り添うようにして口を開いた。



「優一さん・・・私、あなたと出会えて幸せでした」


そう口に出すと、なぜかポロリと涙がこぼれた。



あんなに泣けなかったのに、今になってようやく溢れてくる想い。






私、本当に優一さんのこと大好きだった。


本当に、本当に、愛してたんだ。







涙で声にならない想いを必死で繰り返す。


すると、優輝くんの手のひらが私の頭をそっと抱き寄せた。
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