恋結び【壱】
「もうそろそろ秋も終わりますね」
「あたしの大好きな冬が来るんだぁ。楽しみー!」
はしゃぐあたしと大人っぽく微笑む遥。
踊り場に足をぶらつかせながら二人並んで景色を眺める。
「…美月ちゃんは寂しくないんですか?」
「え?どうして寂しいの?」
あたしの言葉で少しだけ眉をピクリと動かす、遥。
深い溜め息を付き、頭をかいていた。
あたし…何か悪いことをしたのだろうか。
「…なんか…ごめん、なさい」
そう言って遥をチラチラ見た。
すると遥は小さく笑いあたしの頭を猫ちゃんを撫でるように愛撫した。
「君が謝ることないよ」
あたしはコクンと頷き、遥を見つめた。
『…美月を苦しめるもの、俺にも頂戴?』
春、確かに遥に言われた言葉。
忘れた訳じゃ無いけど、今確かにあたしが遥に言うべき言葉。
「……っ…」
…言えない、言えないよ。
一体どうやってなぐさめれば―――
「何考えてるの?」
「あっ、えとー…」
「なぐさめは要らないよ」
「ぁぁ……」
遥はあたしの心を読んだかのようにあたしの気持ちを貫いた。
あたしは出る言葉も出ないでただ呆気に取られるだけであった。
再びあたしと遥の間には沈黙が流れ始め、口を開く事はできなかった。
すると―――
「…あ…」
ひとひら、綺麗な紅の紅葉があたしの膝に落ちてきた。
まだ朽ちてない極上の紅葉と言ってもいいだろう。
あたしは優しくその紅葉を手に取る。
「…もみ…じ…」
「もう、全てが散るでしょうね」
全てが散る。
そう、思うけれど。
あたしは重大な事に気が付いてしまったのだ。
あたしは紅い紅葉を遥の目の前に突き出した。
「遥、ちょっとおかしくない?」
「何が?」
「この木、桜の木じゃなかったっけ?」
あたしは不思議で訪ねてみたが、遥は愉しそうに、だが困った顔をして笑っていた。
あたしはかなり不審に思うがそれを抑え、自分の前に紅葉を持ってきて紅い艶やかな紅葉を見つめた。