恋結び【壱】

第十三話 関係




冬が来た。
まだ雪は降っていないが厳しい寒さが身を震わせる。
そしてあたしはまた違う震えをしていた。

自室で縮こまり、翔太くんを隣に。


「…美月」

「…」

「おい」

「…」


顔を上げられない。
不機嫌気味に翔太くんは溜め息をついていた。


これでもう10日間、遥と会っていない。
いや、会わせてもらえない。

どんなに会いたくても、会えないのだ。


隣にいる翔太くんが遥に宣戦布告のような事を言うだけ言って、あたしを遥の傍に近付けない。
それと、あたしは翔太くんに言われてしまったのだ。
あの日の帰り道。
水城神社を出たらすぐ。




『…美月はあいつが本当に好きなのか?』





と。
あたしは好きなんだと自覚している。
たが、“本当に”っていう言葉が引っ掛かって考えがつかない。


あたしは遥が好き。
だけど自信が持てず正直怖い。


「美――」

「怖いよ…」

「…え」


あたしは言葉に出していた。
本当に好きなのかわからない。
だったらなぜ、今まであたしは遥を想い続けてきたのか。
なぜ口付けを交わし、抱き締めあったのか。


「…もう」


翔太くんは縮こまるあたしを抱き締めた。
冷たい身体が徐々に暖まって行く。


「…もう、あいつの事なんか忘れろよ」

あたしは首を左右に振った。
忘れることなんかできない。
だって、あたしの心と身体、脳内も全て。

遥でいっぱいなのだから。


「……」


会いたいよ、遥。



あたしの願いは儚く終わる。


「…俺だけを、見て」


そう言って翔太くんはあたしの頭を優しく撫で、おでこにキスした。

胸が不自然にうるさい。
警告を知らせる鐘ではなく。
恋のようなドキドキでもない。

ただ、胸騒ぎがした。









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