恋結び【壱】
唇を割って入り込むアレ。
生暖かく、ざらついていて、生き物のように動く。
「……ん、んんんっ…」
うっすら目を開けてみると遥の顔と、木造の天井。
逃れようとしても、上から被さる遥の力に負けてしまう。
苦しいっ!!
「んもっ……むりぃっ!!」
「わっ…!!」
あたしは遥を左右に勢いよく揺さぶった。
バタバタと足が動き、あたしは固く目を閉じる。
「……」
ちょうど治まった頃、あたしはゆっくり片方ずつ、目を開いていった。
そしたら目の前には月明かりと雪の光に照らされた遥の顔。
前髪が少し乱れて白いおでこが眩しい。
「は…る…」
「…大胆だね、美月ちゃんは」
あたしは遥の上に乗っていたんだ。
急にあたしの頬が熱を持ちはじめて来て、あたしはそっさに遥の上を降りる。
「…ご、ごめんなさい…」
「平気だよ」
そう言って身体を起こす遥。
あたしは恥ずかしくなって視線をそらし、俯く。
ドクン、ドクン。
甲高く心臓が鳴り響く。
まだ微かに残る遥の味。
口の中を支配していくようにその味だけがあたしに染み付いて離れない。
「美月ちゃん…?」
にょきっとあたしの顔を除き込む。
一瞬ドキッとしてしまう。
あたしは遥から離れようと立ち上がる。
そして襖の前に立った。
「お布団、敷かないと…」
「そうだね」
遥は満面の笑みでそう答えた。