恋結び【壱】


あたしは部屋の障子開けた。

「一体どうし―――」

ボフ。
あたしの顔面に何かが勢いよくぶつかった。
柔らかいが、痛い。
足の上に落ちた物。
それは薄い桃色の座布団だった。
あたしは、座布団を投げつけられたんだと、目眩をする。

「…」

あたしは溜め息を吐き、座布団を拾う。
だが辺りは騒然としていた。

「絶対、御雑煮だからな!」

「いや、御汁粉よ!」

内容は驚く程に馬鹿馬鹿しかった。
御雑煮と騒ぐ翔太くん。
御汁粉と騒ぐ夏希さん。
親子揃って似たようなことで揉めていた。
それを呆れ半分で見物するお父さんとお母さん。
楽しそうに笑顔を見せながら見物する達大さん。
あたしは座布団をもとの場所に戻し、お母さんに事情を聞いた。

「なんでこうなってんの?」

「お昼ごはんのメニュー決めてたらこうなったんだよ…あはは…」

「…」

………くだらない。
素直に譲れば済む話なのに。
もし譲れなければ正々堂々じゃんけんにしちゃえばいいのに。

あたしは頭の中で色々考えてみる。
そして溜め息を付きながら言った。

「あたしお昼は御汁粉がいいです。明日の朝ごはんを御雑煮にしたいです」

「そうよ!!」

夏希さんは喜んでいた。
それはともかく正論だったのは確か。
こうすれば結局二種類食べることができる。
やはりあたしは学校を代表するくらい成績優秀だったからそれなりに頭は―――


「いや、俺は昼に御雑煮を食いたい」

「…」

白けた。
いや、正しくは静寂し、皆硬直化して声が出ないのだ。
悔しいくらい謙虚な言葉を発した翔太くん。
あたしは参った。

「……なら両方とも食べちゃおうよ……」

「「ああ!!」」

夏希さんと翔太くんはさっきと裏腹にひらめいた顔をし、楽しそうに笑っていた。
その光景に周りは苦笑い。

「…はぁ」

あたしは安堵と呆れの溜め息を吐いた。










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