恋結び【壱】
あれから日は経ち、3月に入って少しが経った。
俺は毎日踊り場に腰掛けながら彼女を待った。
でも、一向に彼女は姿を現さなかった。
今日もまた来ない彼女をただじっと待っていた。
「…」
もうすぐ春が来る。
木々には蕾ができ、春に満開の花を咲かせてくれる。
程好い暖かい風が髪を揺らし、目を瞬かせた。
そう言えば、あの時もこんな日和だったな。
ふと、俺は思った。
―――…
春の陽が暖かい。
風が心地好い。
こんな日は昼寝が好ましい、か。
俺は踊り場に座り、柱にもたれ掛かりながら目を閉じた。
それから見ない夢の中に一点の光が灯る。
なんだろうか。
この暖かい光は。
俺はただチラチラ灯る光から目を離せずにいた。
……ある予感がした。
君なのか?
会いに来て、くれたのか?
すうっと身体が浮いた気がした、が。
パキッと何かが折れた音がしてうっすらと目を開けた。
驚いた。
なぜなら、君に似た光は本当の君ではなく0から作り直した全くの別人だから。
途端に失望した。
けれど目を閉じたって光は輝き続けていた。
「誰」
「!?」
俺の声に目の前の女の子は焦りだしてあたふたとしていた。
「ご、ごめんなさい!あたしは、その…怪しい者じゃないっていうか…怪しいけど怪しくないっていうか…。あれ?あたしって怪しい!?…ッハ!!いや、違っ…その…」
気付かれないように俺は思わず吹き出した。
ニッコリ笑い、女の子を訪ねた。
女の子は少し照れながら答えた。
「成瀬美月」
この時俺の胸に、思考に、何かの衝撃を受けた。
ナルセ、ミヅキ。
その名前に、容姿に。
俺の中の何かがぐらついた。
―――…
「……」
俺と美月ちゃんが出会ったのも考えてみたらこれで一年になるのか。
俺は一人、真っ赤な鳥居をただ見つめていた。
そこをくぐってこっちに笑って走ってくる美月ちゃんが頭を過る。
………だけど、来ない。
「……」
俺は唇を噛んだ。