恋結び【壱】
触れた唇が、熱い。
これは世間からすれば“キス”という行為。
翔太くんはあたしを受け入れたのかな?
あたしのこと、好きなのかな?
「…はっ」
離れた唇の隙間に、あたしは息を漏らす。
唇が熱い。
頬が熱い。
それ以上に、目尻が熱い。
少し、涙ぐむ目で翔太くんがぼやける。
「…しょ…た……くん…?」
いつものヘラヘラした翔太くんじゃない。
真剣で、無表情とでもいうぐらい、真面目な顔をしている。
「……もう一回…」
ももももう一回、だとっ!?
そう言うと、翔太くんの顔はまた、近付く。
そしてまた、唇は塞がれる。
なんの罪もないのに、自由を奪われる、あたし。
だけど、抵抗する気力さえ、出てこない。
ここで嫌がったら、嫌われそうだから。
それもあった。
それに、あたしは力を無くし、抵抗する力も湧かないのだ。
唇は離れ、自由を取り戻すあたし。
肩を使い、息をしながら、あたしは翔太くんの方に身体を倒した。
そんなあたしに何も言わずに、優しく、抱き締め、口付けをする。
何度も何度も交わされる短いけど長い、キス。
角度を変えては、その隙間から熱い吐息が漏れる繰り返し。
ふと、気が付けば、あたしの後頭部に翔太くんの手が添えられた。
これはヤバい、と思ったが、もう遅くて。
だけど必死にもがく。
翔太くんの胸板を力の有る限り叩きまくる。
それに気づいたのか、翔太くんの唇はゆっくり離れた。
あたしは翔太くんに寄り掛かりながらも、空気を思いっきり吸う。
そんなあたしの頭に手を添え、優しく撫でる。
「……美月可愛い…」
そう、呟いて、ソッとあたしを抱き締めた。
翔太くんの匂いがする。
だけど、あたしの胸は警告の鐘のように鳴り続けた。
「…どうだった?」
「っ!!??」
翔太くんは意地悪そうに、だけど愉しそうにあたしに問いかけた。
「なんて人だ!なんて奴だ!」と思いつつ、あたしは顔を上げ、翔太くんを見上げる。
と。
翔太くんは妖艶な笑みを浮かべていた。
あたしは一度、ピクリ、と、身体を強張らせるが、直ぐに翔太くんを睨んだ。
「…い…じわる…」
「勿体無き、御言葉」
「褒めてないし!!」なんて、意地を張ってみるが、「いやいや、褒め言葉だよ」と流されてしまう。
翔太くんはあたしの頭をくしゃくしゃになるぐらい、撫でた。