恋結び【壱】
「何…今の」
「雅也が…美月と…」
二人は手を合わせて、こっちを嬉しそうに笑った。
「「キス!!!!」」
きゃあきゃあ言っている、花恋と美波とは裏腹に、あたしは呆然としていた。
雅也は、というと。
真剣な顔をして、あたしを見つめる。
そしてあたしの高さまでかがむと。
「成瀬、俺と付き合わない?」
そう、言ったんだ。
それがあたしと雅也の始まり。
彼氏を作ることが嫌になった、と言ったけど、雅也と出会って、何かが変わった気がした。
前の彼の話を雅也にしてみたら、雅也は微笑み「俺は成瀬に悲しい思いもさせないし、怖い思いもさせない」と言ってくれた。
雅也とはデートもしたし手も繋いだ。
それに抱き合ったしキスもした。
前の彼氏の事は忘れるぐらい、幸せで幸せで、何より、一緒にいて不満が無かった。
お互い違う高校だったけど、浮気する影も無く、充実している恋愛だった。
付き合って2年が経ち、あたしたちは高校2年になった頃だ。
雅也の身の回りに異変が起きた。
デート中に掛かってきた雅也の携帯の着信音。
雅也は面倒くさそうに携帯を耳に当て、あたしはその雅也を愛しく見ていた。
すると。
雅也は真っ青な顔をしていた。
「…どうしたの?だいじょ――」
「ごめん、成瀬」
「え、ちょ…、待って」
「お前は来んな!!」
雅也はあたしの顔を見て、「悪い」と謝罪の言葉を述べ、駆け出して行った。
どこへ行くの?
あたしは不信感を覚え、陸上部だった足の速さを利用し、雅也を追った。
スニーカーだったら良かった。
ヒールのある靴は走りずらい。
だけど―――。
行かなきゃ良かったんだってあたしは気付いてしまった。
雅也を追って着いた場所は、病院だった。
雅也は慌てて受付口で何やら話して、また走って行った。
あたしも走って雅也を追う。
二階に上り『204号室』に雅也は入って行った。
お母さんかな?
お母さんが急に倒れて駆けつけて…。
絶対そう。
あたしはしまった扉のパイプでできた手すりに手を添え、ゆっくりスライドさせた。
目の前には1つのベッドを囲む白いカーテンと雅也の背中。
「…まさ…や?」
恐る恐る、声を出した。
すると、あたしに真っ黒い闇がのし掛かった。