恋結び【壱】
―――…
数分後。
あたしたちは大量の荷物を家内に一通り終えたあと、居間に集まり、顔合わせをした。
「大久保翔太です」
“彼”は凛とした表情をあたしの両親に見せた。
きっと、メンクイなお母さんには、瞬殺だろうけど。
緊張で顔は見れないけど、きっとお父さんも、お父さんなりに、その整った顔立ちに感動して顔を赤らめているに違いない。
まったく、ウチの親といったら…。
我ながら呆れてしまう。
あたしは小さく溜め息をつくと、俯く顔をあげる。
「――…」
すると“彼”とちょうど目が合ってしまった。
あたしはあわてて目をそらすと、それを見て笑ったのか、“彼”は吹き出していた。
な、なんなの!!??
ってか、アンタ!
さっきからあたしのこと見て、笑ってるよね!
さっき、荷物を運ぶ時だって…。
ったく、もう!!!
あたしは心の中で気が済むまで叫んだあと、コホンと咳払いしたあと、自己紹介をした。
「成瀬美月です。17です。あと――」
―――…
「…はぁ、やっと終わった…」
あたしは今、自分の部屋らしき場所の前、1人で縁側にいる。
それであのあとあたしは、自分の成績、持っている資格、趣味、特技など、良い点を言った。
ずっと正座なんて…。
足、しびれちゃったよ。
あぁ、なんか疲れちゃったなぁ。
……精神的に。
あんな物静かな場所にいたら誰だって…。
そうだ!!
気分転換だ!!
だけど…。
「何しよう…」
溜め息混じりに呟く独り言。
庭にある井戸水がちゃぽちゃぽ、あたしの心をかき乱す。
すると、勢い良く風が吹き、あたしの前髪がぶわっと上に立った。
「……ん」
あたしはその強い風に目がしみないように、そっとまぶたを閉じた。
その瞬間――――
カラン、カラン。
「……っ!!」
あたしは勢い良く、まぶたを開けた。
…何…。
今の…。
確かに聞こえた。
神社の…鐘の音が…。
なんだろう。
この気持ち……。
胸が…胸が…。
あたしはその場に立ち上がり、無意識に家を出ていっていた。
どうして…?
なんで…?
こんなに胸が熱くなるの…?
気付けばあたしは、車で通った石段の前に立っていた。