出会えてよかった[短]
私が走り出して、明美や美紀も後を追ってきた。


「葵まさか行く気?」


「そのまさか。」


「やめなよ。」


「また怒られるよ。美紀もう怒られたくないよ。」


「二人は隠れてて。」


私の必死さに何かを悟ったのか、明美はうなずいた。


おまわり…どうか無事でいて。

遠くに見覚えのある背中が見えた。


見間違えるはずはない。


私が初めて尊敬して、初めて恋をした人。


「おまわり!!」


「葵?こっちに来るな!!」


おまわりの背中越しに見えたのは、銃を持った男。


「どうなってんだよ。」


「通り魔だ。何人も刺殺している凶悪犯だ。」


「なんで銃なんかもってんの」

「警察に追われている身だからな。隠し持っていたんだろう。」


その男の顔を見ると、どこかで見たことのある顔だった。


…そうか、指名手配のポスターだ。


「お前ら!何をこそこそ話してやがる。」


「葵今すぐここから去るんだ」

「嫌だね。楽しそうじゃん。」

「葵!!」


普段は見たことのないおまわりの怒った顔。


普段は聞いたことのないおまわりの怒鳴り声。


ねぇ、それさえも愛しいの。


あなたを愛してる。


あなたは子供なんて相手にしないかな。


私はあなたにとって何?


ふと足元を見ると少し大きめの石が転がっていた。


私はおまわりの後ろに隠れて石を拾い上げる。


これをあいつに当てれば…。
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