出会えてよかった[短]
said AOI


目の前にたつ男は、何かをわめき散らしている。


社会がどうの。


環境がどうの。


ヘドが出そうな言い訳を並べて自分を正当化しようとしている。


ったくこれだから、大人は大嫌いなんだよ。


私が石を投げつけようとした直後、男があげた腕が、おまわりをとらえた。


そのうでの先をたどれば、銃口がおまわりを狙っていた。


男の指が引き金にかかる。


ホンの一瞬の出来事なのに、私にはすべてがスローモーションに見えた。


ダメだ!!


死なせちゃいけない!!


あんたは死んじゃいけない人間なんだ。


あんたを必要としている人間はまだ、たくさんいる。


あいつだって、おまわりの手にかかれば…きっと…。


だから…生きて…。


「おわまり!!危ない!!」


おまわりを突き飛ばした直後、銃口から吐き出された弾は、まっすぐに私の体をとらえた。


その後、男が発狂して、何発か撃ってきた。


けれどその弾は、辺りの壁に吸収された。


驚いて私を見るおまわりに、私の中の最高の笑顔を向ける。


ダメだ。


たってるのが精一杯。


倒れる私を、誰かが受け止めてくれる。


私…幸せです。


あなたの腕の中で死ねるなら…。
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