Whisper.
あれから何時間が経っただろう。
私は、彼をベッドに残し、上着を
羽織り、リビングへ向かった。
たまに来る彼の家には、
日用雑貨が置いてあるくらいで
モノトーンだ。
普通のカップルなら彼女の物が
たくさん置いてあるんだろうなとか
余計に考えてしまう。
冷蔵庫から水を取り出して、
それを飲みながら、薄型テレビを
眺めた。
黒い画面に映る今の私は、
何かの抜け殻のようで、
自分でもビックリなくらい
気持ちが悪い。
「爽那…起きたら起こしてよ」
上半身裸で私の隣に座ってきた。
「ごめ…」
相変わらず筋肉のつき具合に
見とれてしまう。