小さなあいつと大きなあたし。
先行き不安だなぁ…
「ねぇねぇ!」
突然隣の席の女の子に話しかけられ振り向く。
「何ですか…ってえぇ!?」
「井川ぁ、うるせぇ」
「す、すみません…」
驚きの光景に思わず声をあげてしまった。
顔はまつげが長く、ぱっちりした瞳にアップのポニーテールが印象的な可愛い女の子。
でも…、
制服は男物。
これは、どういうこと?
頭の中が軽く混乱する。
「ご、ごめんっ。いきなり話しかけたのがそんなに驚いた?」
「いや…」
話しかけられたことより、あなたの今の状況でしょ。
「あたし、早乙女薫。よろしくね」
うわぁ…名前も女の子だ。
ってことは男装?
「あの早乙女さ…っ」
「薫でいいよ!」
「あ、うん…薫ちゃんさ…」
「そんなことより!今朝、隣の男の子と一緒に教室入ってきたよね?どういう関係?彼氏?」
「か、彼氏?ち、違うよ!」
誰がこんな小さいのと…。
「おい、でかいおばさんうるせぇよ」
小学生がまた睨みながら呟く。
「ねぇねぇ!名前なんて言うの?あたし、早乙女薫!」
目をキラキラさせながら小学生に話しかける薫ちゃん。
「俺?…ってえぇ!?」
小学生も気付いたのか口を鯉のようにパクパクさせている。
「沼田!だまれ」
「すみません…」
注意したと同時に鳴り響くチャイム。
「くそ…チャイムなっちまったじゃねぇか。次の時間は委員会決めるから考えとけよ。じゃ、休憩」
「ねえ薫ちゃん。ちょっといいかな?」
「早乙女のその状況は何?」
小学生も同じことを考えていたようで、恐る恐る聞いてみた。
「え?あぁ…これかぁ!あたしは女の子だよ」
「えっ?ってことは…」
「男装?」
「まぁそういうことだね〜」
なんか…違う気がする…。
小学生の方を見ると、納得してないのか微妙な顔をしている。
そりゃそうよね…。