記憶混濁*甘い痛み*3
「寒い……」
「そんな薄着でいたのですから、当然でしょう?困った患者さんですね」
「申し訳ありません。でも……厚着、嫌いなんですもの」
和音が気付く事が出来なかった、ホールの奥で待っていた狩谷の言葉に、友梨は軽く肩をすくめた。
「…………寒い」
そして再び、独り言のように、呟く言葉。右手で包帯の巻かれた左手を、ぎゅっと押さえながら。
「友梨さん、行きましょうか。みんなが、待ってますよ。リズも」
「……」
狩谷のその台詞に友梨は小さく頷くと
もう見えない和音の姿を心の中で見送ってから、そっと右手を左手から外し、先に歩き出した狩谷の後を追った------