記憶混濁*甘い痛み*3
何だかとても身体が重くて、疲れてしまっていた。
また記憶をなくすのが嫌で、何かをせずにはいられなくて
子供達にジンジャークッキーを焼いたりオーナメントを作ったりして、無理に張り切り過ぎたのかもしれない。
腰を上げる事が、酷く面倒に思えた。
「深山咲さん?具合が……悪いのか?」
和音が問いかけた後半の言葉は、深山咲ではなく、条野友梨に向けた言葉だった。
ふるふると首を振って否定をする友梨を、和音はそっと抱き起こす。細い身体が懐かしかった。
けれど抱き慣れた愛しい妻の身体に、細心の注意を込めて触れている。