記憶混濁*甘い痛み*3
……本当は知ってる。
疑似家族として友梨が一番に可愛がっていた彼女が、昨日亡くなった事も。
その彼女の為に、右手だけで器用にスノーマンを作ってあげた事も。
------やはり、友梨の記憶はまた少し消えたのかもしれない。
この前は和音がリズを認識しているというスタンスで会話をしていたのに、今日は『ご存知ですか』と聞いている。
友梨は和音の返事を聞くと、そっか…と、呟いて。
「リンパ腫を患っていた……女の子だったんです。まだ二歳になったばかりで……」
「……」
「母親が免疫不全で亡くなっていて……父親は病院に任せきりでほとんど姿を見せない人で。あの子の……死に目にも逢えなかった」
「……」