記憶混濁*甘い痛み*3
------クリスマスまで、後2日。
友梨は午後に子供達との約束があった事を思い出し、談話室へと向かった。
『病院内ですし、一人で大丈夫です』と、伝えたのだけれど
普段は過保護ではない空也が、何故か付いて来たのがおかしかった。
子供達とも、写真を撮りながら積極的に遊んでくれていた。
普段だったら
『チビの相手はオマエと万里で懲りた』
と、笑って、親戚の子供ですらなかなか抱いたりしないのに
友梨の右手だけのピアノに合わせて、ゆるゆると首を振っていたリズを抱き上げ膝に乗せてくれていた。
他の子供達のように歌う体力がないリズを、不憫に思ったのかもしれない。
友梨はそんな風に感じつつも、空也が自分の孫を抱いてくれているように見えて嬉しかった。
風貌が若過ぎる為に『おじいさま』とは呼びにくいけれど
はやく……
はやく治して、こんなふうに。
いつか。
きっと……