俺と貴女を繋ぐ場所



「いいよ。少しだけ智花の事知れたし。」

「怒ってない?」

(そんな顔で見んな。抑えらんなくなる)
「こんな事で怒んねーよ。帰り道に黙ってた理由が俺の事考えてくれてたって事だし、考え込む癖も知れた。」

「よかった…ほ、と、よか、った…うぅ~」

相当思い詰めていたのか、智花は泣きだしてしまった。

「智花…」

俺は衝動を抑えきれなくなって、智花を抱きしめた。
小さくて細い体の智花が壊れてしまわない様に、そっと優しく。
泣き止むまで智花を抱きしめた。


予鈴が鳴り、俺は智花と別れ教室に戻ると、いつもより教室が騒がしい事に気がついた。

“ショック…松本君が”
“相手の子、誰なんだろう”

どうやら俺の事で騒いでいるらしいが、誰一人として俺に言及しようとしなかった。


3時間目の授業が終わり、休み時間になると次の授業の教科書を忘れている事に気がついた俺は、マサに借りようと8組に来た。

「マサ、歴史の教科書貸して」

8組の前のドアからマサに言った。

「おー!噂の松本さんじゃーん!あ、ワリィ…お前のクラスの奴に貸しちゃってんだよ~」

マサはそう言いながら目配せをしてきた。
視線の先には智花が居た。

(智花に借りろって事か。変な気利かせやがって。)
「そ。じゃあいいや。」

そう言い、また智花を見るとバチッっと目が合った。

あからさまに目を反らす智花。

「小日向さん、歴史の教科書貸して。」

「へ?あ、はい。……どうぞ」

「さんきゅ。借りる。」

そう言って俺が出て行くと、8組がザワザワと煩くなった気がした。











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