俺と貴女を繋ぐ場所
ある日、いつもの様に朝練を終えマサと教室に戻ろうとしていた時。
3階まで階段を登り切って、7・8組の教室がある方へと右折すると、8組の方を見て固まっている智花が居た。
「おー!ヒナちゃんおはよー!」
廊下で気安く声を掛けられない俺の代わりに、マサが智花に声を掛けた。
マサは俺たちの仲を知ってから、智花の事を“ヒナちゃん”と呼ぶようになった。
俺はマサが智花の事を“ヒナちゃん”と呼ぶのを気に食わねぇけど、智花がその呼び名を気に入っているので口出し出来ない。
「ぁ…お、おはよう…河本、くん…」
少しハニカミながらマサに挨拶する智花。
(くっそ…!)
俺以外の他の男にそんな顔すんな。
ふと、智花はマサの後ろに居る俺に気がついた。
「じゃあな、龍之介!行こうぜ、ヒナちゃん。あ、ヒナちゃんさー、数学の宿題やった?見せてくんない?」
「ぇ、あ…うん……」
マサに言われるがまま、マサの後に続いて智花は教室に入って行った。
その教室に入る瞬間、智花は一瞬俺の方を見てくれて、目が合った。
正直、マサには感謝してる。
俺たちの仲が今のところバレてないのはマサが配慮してくれてるからだ。
それに、今までクラスの中で静かだった智花は
マサのお陰で少しずつクラスに溶け込んで来たらしい。
周りからも“ヒナちゃん”と呼ばれるようになったと、嬉しそうに話していた。