ショコラティエの恋人
日常
「真人さん、朝ごはん出来ましたよ!」
とんとんと布団の上から背中を軽く叩かれる。その可愛らしい声は俺の愛しい人のもの。
「おはよ、ほの。」
「おはようございます、真人さん。」
起きて最初にこの笑顔を見るのが最近の日課。ほのかははじめの頃こそ早く仕事に出かける俺より後に目覚めていたが、最近では俺の出勤時間より前に起きて朝食を作ってくれる。
のっそりと起き上がってダイニングに入ると、味噌汁のいい香りが漂っている。
俺が出掛けている間、暇になってしまうだろうとインターネットの使い方を教えてやるとほのかはすぐに使い方をマスターし、最近ではレシピサイトにアクセスしては色んな料理にチャレンジしているのだ。
今日の朝食は純和風。ご飯とワカメの味噌汁と塩サバ、ホウレン草のごま和えがきちんと並んでいる。
「今日の朝飯も美味しそうだな。」
「うふふ。今日のテーマは《古き良き日本の朝ごはん》なんです。」
にこにこ楽しそうにほのかは笑っている。ほのかはどうやら毎日の食事にテーマを設けているらしく、そのバリエーションは冬のぽかぽかご飯、だとか、お子さまランチ風、だとか色々だ。
「いただきます。」
「はい、どうぞ。」
俺が食べるとほのかは少し不安そうな、でも期待を込めた目でじっと俺を見ている。これもいつものことだ。
「うん、旨い。ほのはまた腕上げたな。」
そう言ってやると照れたように頬を赤くしてほのかも自分の食事に手をつける。
こんな日常が俺たちの《普通》になってきているのが密かにうれしい。