ショコラティエの恋人
7時少し前、俺たちは待ち合わせ場所の駅前に到着した。ほのかは撫子色の真新しいワンピースにベージュのコートを羽織っている。俺はざっくりしたモスグリーンのセーターにジーパン、上には紺のコートを羽織るというかなりシンプルなもの。
「真人さん、すごいいっぱい、人が、いますね。」
ほのかの小さくて温かい手がそっと俺の手を握ったので、俺も手を絡ませてぎゅぅっと握り返した。
「驚いた?怖い?」
ほのかはふるふると首をふる。
「怖くはない、ですけど、夜の駅ってこんなにたくさん人がいるんだなあって。」
中学の途中からずっと家にいたほのかは電車通学というものを全く経験したことがないので驚いたのだろう。
「立花さん!」
前から順が手をふりながら走ってきた。
「順、ありがとうな。」
「いえ、後ろの女の子が例の…。」
順は興味津々で俺の後ろにいるほのかを覗きこんでいる。
「ああ、こちら白木ほのかさん。ほの、こっちは同じ店で働いてる武部順さんだ。」
ほのかは俺の後ろでちょこんとお辞儀をした。
「初めまして!どうもよろしくお願いします!今日立花さんからほのかさんのこと少し話聞きました。さ、行きましょう!」
そう言って歩き出した順に着いていく。