ショコラティエの恋人
俺を挟んで左右に順とほのか。正確にはほのかは俺の手を握ったまま俺の少し後ろを歩いてる。
道中はずっと順が色々と話してくれて、時々俺が相槌を打ったり質問したりしながら楽しく今日の目的地へと向かった。てっきりどこか外に食べにいくものだと思っていたら、順が紹介してくれた女性のお宅へみんなでお邪魔するらしい。
閑静な住宅街を歩いていくと、普通の一軒家の前で順が立ち止まった。煉瓦っぽい外壁にイタリアを思わせるようなオレンジ色の屋根が乗っかっている。
豪邸というわけではなく本当にこじんまりとした暖かみを感じる家だ。外壁と同じように煉瓦の表札には、藤森、と刻まれている。
順が呼び鈴をならすと、中から50代後半から60代くらいの小綺麗で優しそうな女性が顔を出した。順とその後ろにいる俺たちのことが目にはいると、にっこりとこちらに微笑みかけた。
「順ちゃん、お二人もお待ちしてました。ささ、早く入って。外は寒いから。」
女性の雰囲気に安心したのか、前にいた順には気付かれないくらいに小さい声で、ほ、とほのかが息を吐いた。
「さ、お嬢さんもどうぞ!」
少し身構えたほのかに女性はすっと手を出して女性の立つ段差の下にいるほのかの目線に合うように少し腰を屈めてほのかの手を握った。
「ハンハーグを作ったんだけど、嫌いじゃないかしら?」
ほのかは大人しく手を握られたままこくんと頷いた。それを見て女性もにっこり笑った。
「じゃあさっそくみんなで食べましょう。どうぞ、上がってくださいね。」
女性に促されて俺たちは家に上がらせて貰った。ほのかは相変わらず俺の手を握って離さなかったが女性の人柄に安心したのかさっきまでの緊張感は消えていた。