ショコラティエの恋人

「ただいまー」


ほのと暮らすようになってから言うようになったただいまという言葉は今ではすっかり習慣になった。


靴を脱いで部屋に上がると、ほのかは玄関で立ち止まってしまった。


「ほの？どうした？」


俯いたほのかの顔を覗き込むと、丸い瞳から大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちてきた。


「…ふ、ふぇっ、ご、ごめんなさぃっ、ぅ」


驚いてほのかをぎゅっと抱きしめた。


「どうした？謝ることなんて無いから大丈夫だよ。」


背中を擦ってやるが、ほのかの小さな嗚咽は治まってくれない。


「ほの、ちょっとごめんな？」


俺はほのかの靴を脱がすと、いわゆるお姫様抱っこでほのかを抱いてリビングのソファに向かった。ソファに座るとほのかを横抱きにして膝の上に座らせた。


とにかくほのかを落ち着けようと、腕の中に抱え込んで背中を一定のリズムでトントンとたたく。ほのかにはこの子供にするようなことがよく効くのだ。


しばらくそのまま抱えていると、ほのかの気持ちも少し落ち着いてきたのか嗚咽は止み、規則正しい呼吸が聞こえてきた。顔を見ると泣き腫らした目は痛々しく赤くなっている。


「よしよし。イイコ。」


優しくほのかの頭を撫でてやる。ほのかの方も気持ち良さそうに撫でられている。


「ん、少し話せそう？」


ほのかはその問に対して僅かに頷いた。