ショコラティエの恋人
仕事場に着くと白いユニフォームに手早く着替えて厨房に入った。厨房に入ると既に一番年下の順が練習していて、俺は二番目だった。
「おはよう。早いな。」
俺が来たことに気付かないほど熱中していたのか、順は声をかけるとビクリと肩を震わせた。
「たっ、立花さん!おはようございます!」
「驚かせて悪いな。…それはウイスキーボンボン?」
順の手元を覗き込むと一口サイズのチョコレートがあった。
「はい。今練習していて。これは今出来たばかりなんですけど、良かったら試食して貰えませんか?」
「ああ。」
俺は一つを手にとって口に含んだ。ウイスキーの味が広がっていく。なかなかの出来だ。緊張した面持ちで俺を見つめている順が今朝のほのかに重なって可笑しかった。
「どうですか?」
「ああ、なかなか旨い。まだ粗削りだけど、前に比べたらかなり良くなったよ。この調子で頑張れよ。」
「はい!」
順はきらきらと顔を輝かせた。
「このチョコ試作品だよな?良かったらいくつか貰ってもいいか?チョコ大好きなやつがいてさ。」
「も、もちろん!嬉しいっす!」
「いくつか貰うな。」
ほのかに少し食べさせてやりたくなっていくつか貰って綺麗な袋に入れた。今日はこれの他にもいくつか作ったチョコをもって帰ろう。ほのかがリラックスして話せるように、チョコを摘まんで紅茶でも飲みながら。
帰宅後のことを考えていると俄然モチベーションは上がり、俺は順と共に仕事の準備を始めた。
その日の仕事にはいつもよりさらに力が入っていた。