ショコラティエの恋人


野菜炒め定食とさんま定食を頼んだ。


「そういえば、順が田舎から出てきたのって高校中退してからだったっけ?」


「そうです。高校の時にテレビでショコラティエのドキュメンタリーみたいなの見て、俺がやるのはこれしかないって思って親と喧嘩したまま勝手に学校辞めて上京したんですよ。」


順は苦笑いしながらも楽しそうにそのときのことを話す。


「色んな店回って、働かせてくださいってお願いして。今も大概世間知らずですけど、ホントに無知でしたよね。高校も卒業してないような突然訪ねて来たアホなガキ雇うなんて頭おかしいですよ。」


「うちの店に入ったのは何がきっかけだったんだ?」


「店長に拾って貰って。」


順はそう言って思い出したようにクスクス笑った。


「他の店で俺が働かせてくれって頭下げてるところにその店の人と友達だった店長が偶々来て、じゃあ俺んとこ来るかって言ってくれたんです。」


「店長は頭のおかしい大人だったんだな。」


さっきの順の言葉を引用してからかうと、順もクスッと笑ったあと、店長には内緒にしてくださいよ、と焦って念を押すので可笑しくなってまた笑った。


そうこうしているうちに野菜炒め定食とさんま定食がやって来た。美味しそうなそれを見て順は目を輝かせている。俺たちはそれぞれ食事に箸をつけた。

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