ショコラティエの恋人
新しい出会い
仕事が終わると俺は早足で家路に着いた。一応ほのかに夕飯は作らなくていいとメールで知らせておいたが詳しいことはまだ話していないので早く帰ってほのかに伝えたいと思うと気持ちが逸る。
駅に向かうまであと二時間ほどあるから、その間にほのかと少し話して出かける準備をしないとな。
がちゃっと玄関の鍵を開けると、音が聞こえたのかほのかが玄関までぱたぱたと駆け寄ってきた。
「ただいま、ほの」
「おかえりなさい!」
俺に飛び付いてぎゅぅっと抱き付いて来たほのかが可愛くて、左手でほのかの背中を抱き返してやるとバッグを玄関に置いた右手でそっと頭を撫でた。
ほのかは嬉しそうに、まるで喉を撫でられた猫のようにすりよってくる。
「ほの、今日何してた?」
「んぅー、ずっと考え事してました。朝話してたこと。」
「そのこと、ちょっと話そうか。とりあえず中に入ろう。」
ほのかの肩を抱いてソファに誘導する。ソファに二人して腰を下ろすと、ほのかが小さなため息を1つこぼした。
「ふふ、考えすぎて疲れた?」
頭を撫でてやると眉間にシワを寄せてぶぅっとしながらこくんと頷いた。口をタコのようにすぼめているのがなんとも愛らしくてまたくすりと笑ってしまう。
「ほのはどう思った?」
俺の話を先にしてしまうとほのかが何も話せなくなってしまいそうなので敢えてほのかの話に切り込んだ。
「わたしは、やっぱり学校は、ちょっと、あの、」
「怖い?」
ほのかは神妙な顔で頷いた。
「ずっと人と関わってないから、急にたくさんの人と…一緒に勉強するの、ちょっとだけ、怖くて。想像できないんです。自分が色んな人と教室にいるの。」
ほのかを抱き締めた。目にたくさん涙を貯めていたから。だけど敢えてそのことには触れない。
「うん。わかった。じゃあ今度は俺の話を聞いてくれる?」
うん、と頷く仕草がとても好きだ。