小話帳
君を抱くその腕は
さっきまでぬくもりを抱えていたはずの腕は、血や涙に濡れて冷たくなっていた。
彼女が望んだとはいえ、自分が殺したことにかわりはない。
裏切り者と見抜けなかった。見抜いていても、もしかしたら彼女を好きになっていたかもしれない。
いや、きっと好きになっていた。
首筋に顔を埋めて泣く。彼女の前で泣いたことはない。でも今日は泣かせて
君が消えたことを、悔やませて
微笑みを浮かべた顔、
ああ、君は幸せでしたか?なんて。問うて答えてくれたなら、君は何と答えるのだろう
腹から抜いた刀は血に濡れ、彼女も己も血だらけ
心もうでも、冷えていく
―君を抱くその腕は―
(これから罪を抱えてく)
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真面目で堅実な武士1。真面目ゆえに溜め込んだりするのを見抜き気遣う彼女に引かれていき
結局気持ちは伝えあえずに、彼女の命は散ってった
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