小話帳
並んで歩くにはまだ遠く
彼と出会って、付き合いはじめてもう5年。いくらか成長した彼を見ると、大きくなったなあと感じ、まるで彼だけが成長したような錯覚を覚える。
彼が成長した分だけ、己も年を取ったということなのに。
「先輩、ごめんなさい、待ちましたか?」
『平気だよー』
彼と初めてであったのは大学へ遊びにいったとき。サークルへ久々に顔を出したときに、彼は新入生としてそのサークルへいた。
それからちょくちょく話したり会うようになって、今ではそうゆう関係。
今日は久しぶりの会社帰りのデートだ。
『久しぶりだね、こうやって会うの』
「そうですね!あの、ご飯食べ終わったら行きたいところがあるんですけど…いいですか?」
『いいよー』
手を繋いで、まだ寒い夜の道を歩く。
いくらか高くなった背、広くなった背中。
ああ、やはり大きくなったな
どんなに時を過ごしても、私たちの離れた年の差は絶対に埋まることはない。
2、3歳の年の差なら耐えられた。でも、5歳と言うのは大きくて。
それは好きであっても、焦りや劣等感が生まれていくんだ。
ご飯を食べ終わって、先程より少し寒くなった道を歩く。
彼が止まったのは、薄暗く、でも明るい教会の前。
『え、』
「行きましょう」
ぐっと前に引かれて歩く。
.