parallel
 


「そういえば、名前は?」



バスは彼を降ろしてからまた動き出した。


あと、2つ。

彼がバスを降りてから、2つ後に私は降りる。



「茅依」

「俺は尾崎拓馬、拓馬って呼んで」

「ごめん聞いてないから」



"ひでえ"とかなんとか言いながら笑う男。

見た目は厳つくて明らか怖そうな人に見えるのに、その笑った顔は思ったよりも可愛くて。

ちょっと私もつられて笑ってしまった。



「――高校前、」



アナウンスがかかり、バスが停車した。


私と拓馬は、勿論降りる場所は同じで、降りてからも歩く道は同じ。

"後ろついて来ないで"なんて馬鹿なこと言いながら靴箱まで結局一緒に歩き、そこからは何を言うこともなく自然にそれぞれの教室へ向かった。


拓馬に今日初めて会ったけど、前から知り合いだったと思うくらいノリが合って、最初はあまり好かなかったものの正直今は出逢えたことにちょっと嬉しさを感じている。


 


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