parallel



バスの戸が開く。


あ、れ。

いつもバスの戸が開けば目の前にいるはずの彼がいない。

ちょっと待ってなんで!

やっと会えるという嬉しさが一気に崩れ落ちて、溜め息に変わる。


とりあえず私はバスに乗り込んで、いつもなら彼が立っていたはずの場所に立つ。



本当にいないの……?

絶望感に駆られながらもバス内を見渡す。

すると、後ろのほうの座席にイヤホンをして外を眺めている彼を見つけた。


なーんだ。

今日は椅子に座れたんだ。


一気にほっこりと気持ちが暖かくなる。

ちょっと遠いけど、会えたならそれでいいや。


曇り空。

見慣れた景色がどんどん目の前を通り過ぎていく。


 
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