私と彼と彼とmusic
「死んでしまいたい。死んでしまいたい。」
ギターの音と、男の人の歌声。
「……?」
私はその声に導かれるように
ふらふらと歩みを進めた。
そこには、10数人の人だかりと
その人だかりの前でギターを片手に歌う
男の人。
「死んでしまいたい。死んでしまいたい。
その声は誰か助けて、そうなんだろ?なぁ?
僕は僕でなく、
何者でもなく、
誰かになりたいんだって!!
君を助ける誰かになりたい」
演奏が終わり、
観客が拍手し、
男の人は「センキュー!」と片手をあげにかっと笑い、
「次は今週の週末に○×ライブハウスでやるんで
よろしくお願いします!!!」
観客はそれぞれ男の人と会話を交わしたり、
CDを買ったりして去っていったが、
私は男の人から数メートル離れたその場から動けずにいた。