ペテンな彼氏
 もう息がかかりそうなくらい、顔を近づけた。
 けれどぶっちゃけ、何のトキメキも今の私にはない。

 「・・・ねぇ、取引」

 恭真さんが何か言うたびに身が竦む。

 「今から俺と付き合うのと、佐月千也と佐月都がボッコボコにされんの、どっちがいい」



 私はドキンとした。


 何で、お兄ちゃんと弟の事知ってるの・・・?
 けれどそんな私をお構いなしに恭真さんは続ける。

 「答えないと教師に脅して、お前を退学させっから」

 ・・・う、それだけは困る。
 高校中退で大学にいけるわけがない。

 そして私はハッとする。
 こ、こんなときに呼び捨てにしやがって・・・!!おかげで変にドキッとした。

 「・・・ぅ、いいです、付き合います、分かりましたよ、それでいいでしょ」


 最悪だ。
 何で初対面のこんな奴と付き合わなきゃいけないの?
 落ちる訳がない、こんなチャラ男に。というか、絶対落とされない!

 お兄ちゃんと弟の事をどうして知ってるのかは後できく。


 今はとりあえず、・・・とりあえずでも付き合う、って言った方がいいかも。



 お兄ちゃん達のために。
< 13 / 180 >

この作品をシェア

pagetop