ペテンな彼氏
 私はドアの前で足を止める。

 ちょっと横を見ると、真っ黒な長ランがこっちへ棚引いているのが見えた。

 それで私は、恭真さんが〝あの時〟みたいに私に覆いかぶさっている、という事を把握出来た。

 ただ違うのは、前からじゃなくて後ろから覆いかぶさられているという事。

 「俺にはね、女嫌いっつー性癖があんの。昔色々あったんだが・・・それでもお前に『女になれ』って言ったのはお前に惚れたから」

 私はドキンとする。

 こうやって覆いかぶさられてると、何だか心臓が早くなってくるのが分かるんだ。

 
 ・・・こいつの〝手口〟は上手い。

 「理由なんて多分分からねぇと思うし、理由なんていらねぇ。そうだろ?」
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