バケバケ2
4.哀歌
4.哀歌
シイが帰ったあと、俺はあの時の出来事を思い出していた。
ふとエレジーを見ると、俯いて何かを考えているようだったので、きっと俺と同じことを考えているんだと思った。
シグのことは思い出したくもない。
でも、あいつとの出会いが俺とエレジーを結びつけたという事実は確かにあるのだ。
悔しいけど、あいつのおかげで今の俺があるのだ。
そして、エレジーも。
彼女はもともと俺のパートナーではなかった。
彼女がまだバケバケではなかった時、つまり鏡の姿だった時、彼女はシグのものだったのだ。
少しだけ昔のことを振り返ろう。
これは今から約10年前の話。
まだ俺が幸せで、なにも知らなくて、そして故に不幸だったときの話。