バケバケ2
「今日のお客さん、灰音と同じ年くらいの男の子連れてたわ。遊びに誘ってみたら?」
そう言うと母はコーヒーを片手に俺の向かいの席に座る。
「うん。」
いつものパターンだった。
父の客はたまに子連れで来ることがある。
そういうときは、俺がその子供を遊びに連れ出すのだ。
客側としても、子供に商売の話は聞かせたくないんだろう。
俺は朝食を食べ、リビングを出た。
応接室からはかすかに人の声が漏れていた。
ゆっくりと扉を開ける。
父がすぐに俺に気がつき声をかける。
「灰音か、おはよう。」
「おはよう。」
父の向かいに目を移すと、初老の男性が座っていた。
「こちらは坂本さん。お客様だよ。灰音、あいさつして。」
「こんにちは。」
俺は軽く頭をさげる。
優しそうな顔をした人だった。
坂本さんは俺を見て微笑み、「こんにちは。」と言った。